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俳聖が句心かきたてた「おくのほそ道」をぶらり(産経新聞)

 【ぶらり旅物語】「おくのほそ道」を旅した。白河の関(福島県)から平泉(岩手県)までの、春なお浅き奥州路。全行程2400キロに及ぶ松尾芭蕉の足跡のほんの一端だが、俳聖の旅心、句心をかきたてた東北の魅力にふれた。(文・写真 鹿間孝一)

 ◆俳句で町おこし

 「月日は百代の過客にして、行(ゆき)かふ年も又旅人也」。松尾芭蕉は元禄2年(1689年)弥生(3月)、「おくのほそ道」に旅立った。

 大阪から福島空港へ。同じ3月末でも芭蕉は旧暦だから1カ月以上違う。機内で「福島空港の気温はマイナス1度」とアナウンス。春から冬へ。1時間で季節が変わった。

 まずは白河の関、小峰城を見学して、芭蕉記念館のある須賀川へ。宿場町の面影を残す土蔵や格子造りの家々が、軒先に好みの俳句を記した行燈を掲げている。さすが芭蕉ゆかりの地。ちなみにこの旅行でガイドを務めてくれたのは各地にある「おくのほそ道研究会」の皆さん。

 旧知の相楽等躬を訪ねた芭蕉は須賀川に1週間滞在している。とりわけ等躬邸の片隅にある栗の木の下に庵を結ぶ隠遁僧、可伸のつつましい生き方と人柄に心を打たれたらしい。

 「世の人の 見つけぬ花や 軒の栗」

 小さな公園に整備された庵跡に、何代目かの栗の木と句碑があった。

 芭蕉も立ち寄った飯坂温泉に着いた。共同浴場として有名な鯖湖(さばこ)湯につかりたかったが、湯温47度という熱さで断念。夜、穴原温泉で疲れを癒やしていると、雪がちらついて雪見の露天風呂。これもみちのくの旅情だ。

 ◆義経への思い

 「おくのほそ道」には芭蕉の源義経への深い慈しみがうかがえる。

 旅の2日目は医王寺から。屋島の合戦で頼朝に追われた義経の身代わりとなって討ち死にした継信、忠信ら佐藤一族の菩提寺で、義経の太刀、弁慶の笈(おい)などが残る。

 「笈も太刀も 五月にかざれ 紙幟(のぼり)」

 5月の薫風が吹き渡る、リズミカルな句がいい。

 義経終焉の地といわれる高館(たかだて)。平泉に逃げた義経を藤原秀衡が手厚くかくまったのに、息子の泰衡は頼朝を恐れ、父の遺志に背(そむ)いて義経を襲った。ここに有名な「夏草や 兵(つわもの)どもが 夢の跡」の句碑が建つ。

 義経の木像を安置した義経堂から眺めると、眼下に北上川が悠々と流れ、遠くには弁慶が立ち往生したという衣川。まさに「兵どもが夢の跡」。

 ◆世界遺産めざし

 芭蕉は訪ねなかったらしいが、奥州平泉の中心だった毛越(もうつう)寺は、かつて金銀をちりばめた伽藍があり、宇治の平等院より一回り大きい無量光院が大池に壮麗な姿を映したという。度重なる災禍で焼失し、奥州藤原氏も滅亡したが、遺構に立つとその姿が浮かぶ。

 毛越寺や中尊寺など平泉の史跡・文化財は世界遺産に申請している。登録されれば、「おくのほそ道」もまたクローズアップされることだろう。

 芭蕉は平安・鎌倉初期の歌僧、西行の足跡をなぞって旅をした。芭蕉のあとを明治の俳人、正岡子規が追った。東北はいつの時代も、人を旅に誘う不思議な魅力があるようだ。

 旅の最後に出会った句碑は、「人も旅人 われも旅人 春惜しむ」。おっと、これは盛岡出身の山口青邨だった。

                   ◇

 【メモ】

 《おくのほそ道研究会》「おくのほそ道」を現代風にアレンジして東北の観光ブランドに、と東北観光推進機構が各地の観光団体、ボランティア組織をネットワーク化し昨年8月に設立。おくのほそ道の再発見研究やガイドも行っている。

 《花見山》写真家の故秋山庄太郎さんが「福島に桃源郷あり」と評した花の名所。花木生産農家が敷地を無料開放しており、約20種の花が山肌を色とりどりに染める。4月30日まで福島駅東口から臨時バス。福島市観光案内所(TEL024・531・6428)

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